「Face of the Future Award」受賞記念!釜山国際映画祭 公式上映会&Q&Aイベントレポート
第31回釜山国際映画祭にて「Face of the Future Award」を受賞した映画『はじまりのさよなら』。このたびの受賞を記念して、10月11日(日)に韓国・釜山のLOTTE CINEMA Centum City 4で開催された公式上映会のレポートを公開します!
10月9日(金)のワールドプレミア上映に続き、11日(日)の上映後にも主演の大倉琉人と隈本遼平監督が登壇し、現地の観客とのQ&Aイベントを実施。作品に込めた思いや撮影時のエピソード、劇中で使用された楽曲へのこだわりなど、さまざまな質問に答えました。釜山の観客と作品への思いを分かち合った、公式上映会の模様をお届けします。




11月20日(金)よりkino cinéma新宿ほか全国公開となる、murffin discs20周年記念映画『はじまりのさよなら』が、第31回釜山国際映画祭の「VISION – ASIA」部門に正式出品され、「Face of the Future Award」を受賞した。
10月9日(金)にワールドプレミア上映を迎えた本作は、11日(日)にも公式上映会を開催。上映後のQ&Aイベントには、主演の大倉琉人と隈本遼平監督が登壇した。現地の観客からは、主人公・樹太の成長や登場人物の心情、音楽の使い方など、作品の細部に踏み込んだ質問が次々と寄せられ、釜山の観客との交流を楽しんだ。
■海辺の町と東京、異なる二つの世界に込めた思い
Q&Aの冒頭では、主人公・樹太が暮らす海辺の町と、父親を訪ねて向かう東京という二つの場所の描き方について質問が寄せられた。
隈本監督は、それぞれの場所で樹太が感じる時間の流れの違いを意識していたと説明。二つの空間で経験する出来事や人との出会いを通して、少年の内面に生まれる変化を映像や編集によって表現しようとしたことを明かした。
また、海辺の町と東京で異なる風景や文化が描かれていることについても、樹太と同世代の俳優たちが、実際に初めて触れる景色や環境から何を感じるのかを大切にしていたという。撮影中に俳優たちが感じた新鮮な驚きや発見を、そのまま映画の中にも取り入れたいと考えていたことを語った。
■大倉琉人が語る、主人公・樹太との共通点と違い
映画初主演を務めた大倉には、主人公・樹太と自身の共通点や、役を演じるうえで難しかったことについて質問が寄せられた。
大倉は、樹太と年齢が近く、自身も変声期を経験していることから、歌いたくても思うように歌えないもどかしさには共感できたと振り返る。また、自身も音楽が好きであることから、樹太の抱える感情を自然に理解できる部分があったという。
一方で、目の見えない母親との生活や、顔も知らない父親の存在など、樹太を取り巻く複雑な家庭環境は自身とは大きく異なり、そうした状況に置かれた少年の気持ちを想像しながら演じることに難しさを感じたと明かした。
■友人のライブシーンで表現した、憧れと複雑な感情
さらに観客からは、樹太が友人・大也のライブを初めて目にするシーンについて、印象的な表情の変化をどのような気持ちで演じたのかという質問も寄せられた。
大倉は、変声期によって思うように歌えない樹太に対し、大也は音楽にまっすぐ向き合い、ギターや歌に打ち込んでいる存在だと説明。
ライブハウスのステージに立つ友人の姿は、樹太にとって輝いて見える一方、自分にはできないことを実現している相手への羨ましさや、複雑な感情も生まれていたのではないかと振り返った。
憧れだけではない、思春期ならではの繊細な感情を意識して演じていたことを明かした。
■隈本監督が明かす、劇中歌「にじ」を選んだ理由
Q&Aでは、物語の終盤で歌われる楽曲「にじ」についても質問が寄せられた。
隈本監督は、本作が音楽とともに少年の成長や変化を描く作品であることに触れ、「にじ」の歌詞には、まだ訪れていない明日や、これから先の時間への思いが込められていると説明。
これから訪れる未来を想像することで、少しでも前向きな気持ちになれるような感覚を映画の中で表現したいと考え、この楽曲を選んだことを明かした。
また、劇中に繰り返し登場する「花」のモチーフについても質問が寄せられた。隈本監督は、撮影時から明確な意味を決めていたわけではないとしながらも、成長することは、それまでの自分に戻れなくなることでもあると語る。
絶えず姿を変えていく花の存在が、少年の成長や変化とどこかで重なっていたのかもしれないと、自身の思いを振り返った。
■親子の関係に込められた、言葉にならない思い
物語の中で描かれる親子の関係についても、観客からさまざまな質問が寄せられた。
父親から樹太に贈られたプレゼントについて、その背景にどのような思いが込められているのかと尋ねられた隈本監督は、物語の設定上、母親と父親は連絡を取り合っており、父親も樹太の成長をある程度知っていると説明。
しかし、実際には会ったことのない息子の好みまで理解しているわけではなく、そこには親子の微妙な距離感やすれ違いが存在しているという。
そうした関係を映画の中で細かく説明するのではなく、樹太自身の視点を大切にしながら描こうとしたことを明かした。
また、劇中に登場する大人たちがどこか子どものようにも見えるという観客の感想に対しては、子どもの成長を喜ぶ一方で、少し寂しさも感じてしまうという、大人の中にある相反する感情について言及。そうした矛盾を抱えていることも、人間らしさや美しさにつながるのではないかと語った。
■釜山の観客との交流に感謝
Q&Aの終盤、隈本監督は、現地の観客からさまざまな質問が寄せられたことについて、自身にとっても貴重な経験になったと振り返った。釜山国際映画祭に参加し、観客と直接言葉を交わす中で、この場所がとても好きになったと語り、感謝の気持ちを伝えた。
大倉も、観客との質疑応答を通して、作品に込めた思いがしっかりと伝わっていることを実感できたと喜びを語った。さらに、映画を観終わった後も、さまざまなことを考えてもらえることのうれしさを知ることができたと振り返り、最後には韓国語で「ノムノム カムサハムニダ(本当にありがとうございます)」と感謝を伝えた。
作品に込められた思いや登場人物の繊細な感情について、現地の観客と深く語り合った公式上映会。釜山国際映画祭での上映を通じて、本作の魅力を改めて分かち合う貴重な機会となった。
【開催情報】
■イベント:第31回釜山国際映画祭『はじまりのさよなら』公式上映会(上映後Q&A)
■日時:2026年10月11日(日)9:00~上映開始/上映後Q&Aイベント開催
■会場:LOTTE CINEMA Centum City 4(韓国・釜山)
■登壇者:大倉琉人、隈本遼平監督
murffin discs設立20周年という節目に、音楽レーベルが初めてオリジナル長編映画製作に挑んだ『はじまりのさよなら』。第31回釜山国際映画祭「VISION – ASIA」部門への正式出品、そして「Face of the Future Award」の受賞を果たした本作は、11月20日(金)よりkino cinéma新宿ほか全国公開となります。
音楽とともに少年の「変化」と「成長」を繊細に描いた本作に、ぜひご注目ください。

